皆さん、こんにちは!Web制作とWordPressの未来を愛してやまない皆さんにお届けします!
最近、WordPress界隈で「AI Building Blocks for WordPress」という言葉を耳にする機会が増えてきましたよね。WordPress AIチームが、オープンウェブにおけるパブリッシングの民主化をさらに推し進めるために、精力的に取り組んでいる未来の基盤です。
このAI Building Blocksは、開発者だけでなく、私たちWordPressユーザー全員が、より強力で柔軟なAI機能をサイトに実装できるようにするために設計されています。今回は、この革新的な4つの構成要素(Building Blocks)を、初めての方にも親しみやすく、かつ深く解説し、それが日常のWeb制作にどのような革命をもたらすか、所感を交えて語りたいと思います!
AI Building Blocks for WordPressの全体像
AI Building Blocksは、以下の4つの主要なプロジェクトによって構成されています。これらの要素が連携することで、WordPressサイトの内部からも外部からも、AIを活用した機能やワークフロー、インテリジェントなエージェント(代理人)を構築できるようになります。
| 構成要素 | 役割(一言で言うと) | 開発者が得られるメリット |
| 1. PHP AI ClientSDK | AIプロバイダーとの通信を統一する「通訳者」 | 独自のインフラ構築が不要になり、機能開発に集中できる |
| 2. Abilities API | WordPressができることをAIに教える「共通言語」 | プラグインやテーマの機能を統一 的に登録・発見できる |
| 3. MCP Adapter | 外部のAIアシスタントとWordPressをつなぐ「翻訳機」 | WordPressの機能を外部AIシステムにツールとして公開できる |
| 4. AI ExperimentsPlugin | すべての機能を試すための「実験室」 | 連携の実装例を学び、新しいAI機能をすぐに試せる |
1. PHP AI Client SDK:プロバイダー非依存の統一クライアント
もし、あなたがAI機能をプラグインに実装するとしたら、「どのLLMプロバイダーを使うか」「APIキーの管理はどうするか」みたいな初期設定が結構面倒くさそうじゃないですか?
PHP AI Client SDKは、この問題を根本的に解決します。
このSDKは、大規模言語モデル(LLM)や埋め込みモデルなどの主要なAIプロバイダーと対話するための抽象化レイヤーを提供します。
開発者視点での凄さ: 開発者は、プロバイダーごとの認証方式、APIフォーマット、ストリーミングプロトコルといった複雑な違いを意識する必要がなくなります。機能構築に専念できるため、「車輪の再発明」が不要になります。
ユーザー視点でのメリット: これが一番重要かもしれません。サイト管理者は、利用したいAIプロバイダーやモデルを自由に選択でき、API認証情報を一箇所で管理できます。これにより、AI機能を持つ互換性のあるすべてのプラグインが、同じ認証情報を使って自動的に動作するようになり、「ベンダーロックイン」を避けられます。
このSDKは、WordPressから独立したPHPコミュニティと連携したプラットフォーム非依存のパッケージと、REST APIエンドポイントやAPIキー管理などWordPress固有の機能を追加するパッケージの2つで構成されています。
2. Abilities API:WordPressの能力の集中レジストリ
WordPressの力は、コア、プラグイン、テーマに含まれる何千もの関数に由来していますが、これらは通常、開発者向けのコードに隠されています。
Abilities APIは、これらの機能を人間にも機械にも理解できる「共通言語」で表現し、一元的に登録・管理する仕組みです。
解決する課題: 現在のWordPressでは、バックアッププラグインがスナップショットを作成できること、SEOプラグインがコンテンツを分析できること、Eコマースソリューションがレポートを生成できることを、AIアシスタントが体系的に知る方法がありません。
Abilities APIは、プラグインやテーマが持つ機能を、明確なスキーマ、詳細な説明、そして明示的な権限(パーミッション)とともに正式に登録するための共通パターンを提供します。
可能性の広がり: これにより、WordPressは孤立した機能の集合体から、能力が発見され、構成され、自動化され得る相互接続されたシステムへと変貌します。このAPIはAIだけでなく、コマンドパレット、ワークフローツール、UI統合など、幅広い用途に利用可能です。
3. MCP Adapter:外部AIとの双方向コネクター
Model Context Protocol(MCP)は、アプリケーションがLLMにコンテキスト(文脈や機能)を提供するオープンなプロトコルです。
MCP Adapterは、このオープン標準を実装し、WordPressが外部のAIアシスタント(ClaudeやChatGPTなど)に接続できるようにします。
役割: Abilities APIに登録されたWordPressのサーバー側のアビリティ(能力)を、外部AIが理解できるMCPサーバーとして公開します。つまり、WordPressの機能がAIアシスタントにとっての「ツール」として利用可能になるのです。
WordPressは、その機能を外部に公開するMCPサーバーとして機能するだけでなく、外部のMCPサーバーと統合するMCPクライアントとしても機能できます。この双方向通信により、サイト管理者との自然な会話を通じてサイトを管理できるようになります。
このアダプターは、認証にアプリケーションパスワード、認可に権限システム(capabilitiessystem)を活用し、セキュリティを確保します。また、Abilities APIを基盤としているため、MCPプロトコルが急速に進化しても、将来的なプロトコルの変化に柔軟に対応できる設計になっています。
4. AI Experiments Plugin:統合された実験の場
AI Experiments Pluginは、先に述べた3つのBuilding Blocks(PHP AI Client SDK、AbilitiesAPI、MCP Adapter)のすべてを統合し、実用的な体験として具現化するプラグインです。
目的: このプラグインは、ユーザーにとってはすぐに試せるAI機能の「実験の遊び場(AIlaboratory)」であり、開発者にとっては、Building Blocksが実際にどのように連携して動作するかを示す「リファレンス実装」として機能します。
探求される機能: このプラグインを通じて、新しいSite AdminインターフェースでのAIエージェントによるサイト管理、Post Editor内でのリアルタイムコラボレーション、メディアライブラリにおけるAIによる自動キャプションや組織化 など、WordPress AIの未来の機能が探求されます。
Web制作者としての所感と日常的な応用のイメージ
このAI Building Blocksの取り組みは、現在のWordPressが抱える大きな課題を解決し、Web制作の日常を根本的に変えるポテンシャルを秘めていると感じています。
最も心躍るのは、Abilities APIがWordPressの持つ力を「構造化」し、AIがそれを「利用できる」ようにする点です。これにより、AIは単なるコンテンツジェネレーターではなく、サイトの運用、保守、改善を一手に担う強力なパートナーへと進化します。
WordPress AIチームは、WordPress 7.0までに、すべてのユーザー(企業サイト運営者からブロガーまで)が強力なAI機能にアクセスし、デジタルプレゼンスの向上に役立てられるようにすることを目指しているそうです。
具体的な日常の応用例を想像してみましょう。
応用例 1: サイト運用タスクの会話による一括指示
現在、複数のプラグインにまたがる複雑なタスク(例えば、バックアップ、SEOチェック、データ分析など)を実行するには、管理画面内をさまよったり、個別のプラグイン設定画面を開く必要があります。
未来の応用(Site Admin UIとAI Agent): 新しいSite Adminインターフェース(UI)では、AIエージェントとの自然な会話を通じて、複数のプラグインにまたがるタスクを一括で処理できます。
- 「先週公開した記事の中で、最も読み込みが遅いページを見つけて、キャッシュプラグインをクリアし、同時にSEOスコアもチェックして。」
- AIエージェントは要求を理解し、Abilities APIを通じて、パフォーマンス計測プラグインの「ページ分析」アビリティ、キャッシュプラグインの「キャッシュクリア」アビリティ、SEOプラグインの「スコアチェック」アビリティを発見します。
- MCP Adapterを通じて、外部のLLMと連携しながら、これらのアビリティを適切な順序で実行します。
- 結果として、ユーザーは数クリックや手動操作なしに、複雑な一連のメンテナンス作業を完了できます。
所感: Abilities APIがあるからこそ、AIがWordPressの「中身」を理解し、指示通りに動けるようになるわけです。特に、プラグイン開発者が自分のプラグインの能力を標準化して登録できるようになることで、カスタムワークフローの構築が劇的に容易になるでしょう。
応用例 2: コンテンツ制作におけるAIの「共同作業者」化
現在のAIライティングツールは、多くの場合、コンテンツの一部を生成する「ツール」として機能します。
未来の応用(リアルタイムコラボレーション): Gutenbergエディター内で、人間とAIがリアルタイムにコンテンツ制作を共同で行います。
- 作成中の記事について、人間がAIに対して「このセクション、対象読者に合わせて、もう少し親しみやすいトーンに変更してほしい」と指示を出します。
- AIは、非同期コメントシステム(Async Commenting)を通じてタスクを受け取り、提案されたリビジョン(修正案)を作成・提出します。
- 人間は、その提案を承認するだけで、トーン調整が完了します。
所感: AI Experiments Pluginを通じて、このようなAIの協調的な役割が探求されることで、Web制作者は面倒な校正やリライト作業から解放され、よりクリエイティブな戦略立案やコンテンツの構成に集中できるようになるはずです。AIはもはや単なるジェネレーターではなく、「チームメンバー」の一人になるのです。
応用例 3: 柔軟で持続可能なAIプロバイダー選択
AI技術は日進月歩で、最適なLLMは常に変わっていきます。
未来の応用(PHP AI Client SDK): サイト運営者は、PHP AI Client SDKによって得られるプロバイダー選択の自由を最大限に活用できます。
- 画像生成には画質に定評のあるA社のモデル、長い文章の要約や分析にはコスト効率の良いB社のモデル、といった形で、機能に応じて最適なプロバイダーをサイト管理者が自由に組み合わせて設定できます。
- もし現在使っているプロバイダーがサービスを終了したり、価格が高騰したりしても、サイト全体の設定画面から簡単に別のプロバイダーのAPIキーに切り替えれば、AI機能を持つすべてのプラグインが動作し続けるため、大きな中断を避けられます。
所感: このプロバイダー非依存のアプローチは、WordPressの「パブリッシングの民主化」というミッションに完全に合致しており、急速な変化に対応するための最も持続可能な解決策だと感じています。
最後に
AI Building Blocksは、WordPressの未来、そしてWeb制作の未来を形作るための壮大なプロジェクトです。特に、その多くが、将来的なWordPress Coreへの統合を見据えつつ、今はComposerパッケージやFeature Pluginとして提供される「canonical first, Core when ready」の哲学に基づいて進められている点も、開発者として安心できる要素です。
最新の情報は以下のページから確認できます。皆さんもぜひ、チェックしてみてはいかがでしょうか?
https://make.wordpress.org/ai/

